『代数の魅力(数学書房)』の情報


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変更箇所一覧(4刷から5刷へ)

誤植を訂正し、情報を最新にしました。


暫定正誤表

第1版第5刷(2016年12月20日発行)

行・場所 誤(修正前)   正(修正後)
1 17 -5,-4 2kπ
1 21 7,12 1 e
1 24 -4 Dn D2n
2 90 10 Xn-mg(X) Xn-m
4 178 3 (x,y)=(x,2y)=(x,x^2-1)=1 GCD(x,y)=GCD(x,2y)=GCD(x,x^2-1)=1
4 179 14 n = n' =
4 194 -2 )(m) (m))
略解 205 17,18,19 問題1.29の3行 ここをクリック
略解 206 18 r4 r4
         

(注) 行の欄で -m とあるのは下から m 行目という意味。
(注) [注:・・・] は修正についてのコメント。

読者への追加(サポート)情報

<用語・記号・対訳英語の追加>

行列 A = (aij) (matrix)
行列式 det(A) (determinant)
m×n 行列全体 Mm,n (m×n matrices)
n×n 行列全体 Mn (n×n matrices)
アーベル群 (abelian group)
巡回群 Cn , Zn , Z/nZ (cyclic group)
二面体群 D2n (dihedral group)
対称群 Sn (symmetric group)
交代群 An (alternating group)
一般線形群 GLn (general linear group)
特殊線形群 SLn (special linear group)
直交群 On (orthogonal group)
特殊直交群 SOn (special orthogonal group)
核 Ker (kernel)

(注) An ⊂ Sn ,  SLn ⊂ GLn ⊂ Mn ,  SOn ⊂ On ⊂ GLn ,  SOn = SLn ∩ On
(注) det : Mn ---> M1 ,  det(A) = ∑σ ∈ An a1σ(1)…anσ(n) - ∑σ ∈ Sn - An a1σ(1)…anσ(n)
(注) det(AB) = det(A) det(B)
(注) SLn = det-1(1) = Ker [ det|GLn : GLn ---> GL1 ]

第3章・章末問題の追加 p.174

10.例題 3.30 および定理 3.47 の主張を証明せよ.

第3章・文中問題(問題の略解を追加) p.218

問題 3.32(定理3.45にある代数閉体の存在を仮定しない別解) [拡大体の構成] 体 K 上の既約多項式 f(X) ∈ K[X] (既約多項式の定義は2章にあるものと同様である)に対して, g(Y) = f(Y) ∈ K[Y], L = K[Y]/I(g(Y)) とおけば, L は K の拡大体となる.ここで, a = Y + I(g(Y)) ∈ L, とおけば, f(a) = 0, L = K(a), [L:K] = deg f(X) となる. [最小分解体の構成] 体 K 上のモニック多項式 f(X) ∈ K[X], deg f(X) = m に対して, K の拡大体 L で以下の2条件 (1),(2) を満たすものが, 同型を除いて一意的に存在する:
   (1) f(X) = (X-a1)・・・(X-am) ∈ L[X], ∃ai ∈ L; (2) L = K(a1, ... ,am).
証明は, f(X) の既約多項式への分解と上で述べられている拡大体の構成を用いながら, m に関する帰納法で与えられる. この L を f(X) の K 上の最小分解体と呼ぶ. 厳密には,「K と K' の同型が, 対応する最小分解体 L と L' の同型に拡張される」という形で進める方が, 帰納法で示し易い.(実際, 同型 σ : K --> K' と f(X) = ∑ aiXi ∈ K[X] に対して, fσ(X) = ∑ σ(ai)Xi とおき, f(X) = f1(X)・・・fr(X) ∈ K[X] を既約多項式への分解とするとき, fσ(X) = f1σ(X)・・・frσ(X) ∈ K'[X] も対応する既約多項式への分解となる.このとき, K, K' のそれぞれの拡大体 M, M ' であって,M = K(a), f1(a) = 0, M ' = K'(a'), f1σ(a') = 0 となるものが存在し, 写像 τ : M --> K[X]/I(f1(X)) --> K'[X]/I(f1σ(X)) --> M ' は σ の拡張で τ(a) = a' を満たす体の同型を与える. ここで,g(X) = f(X)/(X - a) ∈ M[X] とおけば, gτ(X) = fσ(X)/(X - a') ∈ M '[X] であり, deg g(X) = m - 1 < deg f(X) なので帰納法の仮定より, L = M(b2,...,bm), g(X) = (X-b2)・・・(X-bm), L' = M '(b'2,...,b'm), gτ(X) = (X-b'2)・・・(X-b'm) をみたす M, M ' のそれぞれの拡大体 L, L' が存在し, さらに τ の拡張としての体の同型 ρ : L --> L' であって, 適当に番号を付け替えれば, &rho(bi) = b'i を満たすものが得られる.) [有限体の構成] K = Fp および f(X) = Xpn-X とするとき, f(X) の K 上の最小分解体を L とすれば, これが求める Fpn であり, 同型を除いて一意的に定まる. 実際,K = Fp = { 0, 1, 2, ... , p-1 } ⊂ L = Fpn = { a1, a2, ... , apn } かつ f(X) = (X - a1)(X - a2)・・・(X - apn) となる.

問題 3.33 例えば,以下の方法が知られている. x 軸上に3点 1, 0, -1 が与えられているものとしてよい. それぞれ,A, O, B と呼ぶ. O を中心とした半径 1 の円 C を描く. O を通り x 軸に垂直な直線を引き,それが円 C と交わる交点の一方を D とする. OD 上に OD = 4 OE となる点 E をとる. OA 上に ∠OEA = 4 ∠OEF となる点 F をとる. OB 上に ∠FEG = π/4 となる点 G をとる. AG を直径とする円 H を描く. 円 H と OB との交点を J とする. F を中心とした半径 FJ の円 K を描く. 円 K が OA と交わる点を L, OB と交わる点を M とする. L, M を通り x 軸に垂直な2直線が点 B の側で円 C と交わる点をそれぞれ N, P とする. ∠NOP の2等分線が点 B の側で円 C と交わる点を Q とする. ∠POQ = 2π/17 である. よって, 定木とコンパスによる正17角形の作図を具体的に実行することが可能である. (実際,
   cos(2π/17) = (\sqrt{17} - 1 + \sqrt{34 - 2\sqrt{17}})/16 + \sqrt{17 + 3\sqrt{17} - \sqrt{170 + 38\sqrt{17}}}/8
とかけることからも, cos(2π/17) の作図可能性を納得することができる. 自分のノート上で実行すると, 定木とコンパスを何回も用いるので, 手書きの誤差がその度に積み重なり, 最後に円周を17等分しようとすると, その誤差で辻褄が合わずに,うまく描けないことも十分に想定される. その場合には,コンピュータで図形を描くソフト等を使用するのも一案であろう. 各自で作図方法を色々と工夫してみられたい.)

第3章・章末問題(追加問題への略解) p.219
10. [準備] ξ = ξn とするとき, Fn(X) = ∏1≤i≤n,GCD(i,n)=1 (X - ξi) なので,deg Fn(X) = \varphi(n) であることは明らか. (ここに,\varphi(n) はオイラー関数 オイラー関数(n) を表す.)また, Pn(X) = Xn - 1 = ∏1≤i≤n (X-ξni) と置けば, Pn(X) = ∏1≤c≤n,c|n (∏1≤i≤n,GCD(i,n)=c (X-ξni)) であり, ∏1≤i≤n,GCD(i,n)=c (X-ξni) = ∏1≤i'≤n/c,GCD(i',n/c)=1 (X-ξn/ci') = Fn/c(X) なので, Pn(X) = ∏1≤c≤n,c|n Fn/c(X) = ∏1≤d≤n,d|n Fd(X) を得る.従って,4章で議論されるメビウスの反転公式により Fn(X) = ∏1≤d≤n,d|n (Xn/d - 1)μ(d) が成り立つ. さらに, Pn(X) = Fn(X) (∏1≤d≤n-1,d|n Fd(X)) を用いて, Fn(X) ∈ Z[X] であることが(n に関する帰納法で)示される. [例題 3.30] Fn(X) が既約でないと仮定する. このとき, Fn(X) = f1(X) … fr(X) と r (≥ 2) 個の既約多項式の積に分解される(定理 2.22 を参照). 必要があれば番号を付け替えて f1(ξ) = 0 としてよい.補題 2.27 より, f1(X) = cf1 f1*(X), g(X) = f2(X) … fr(X) = cgg*(X) と書ける.ただし, cf1, cg ∈ Q× であり, f1*(X),g*(X) ∈ Z[X] は原始的とする. このとき, 2 ≤ m ≤ n-1 なる m で, GCD(m,n) = 1, f1m) ≠ 0, g(ξm) = 0 をみたすものが選べる.この素因数分解を m = q1 … qs とする (q1,…,qs には同じものが重複して出て来てもよい). これより,番号 t で f1q1…qt-1) = 0, f1q1…qt) ≠ 0, g(ξq1…qt-1) ≠ 0, g(ξq1…qt) = 0 をみたすものが存在する. p = qt とおけば GCD(p,n) = 1 であり,また ζ = ξq1…qt-1 とおけば, f1(ζ) = 0, f1p) ≠ 0, g(ζ) ≠ 0, g(ζp) = 0 が成り立つ.そこで, G(X) = g*(Xp) ∈ Z[X] とおけば,今までのことより, G(ζ) = 0, f1*(ζ) = 0 を得る. 定理 2.18 より, I(G(X),f1(X)) = I(R(X)) ⊂ Q[X] と表すことができ, このとき R(X)|f1(X) であり, さらに我々の仮定より f1(X) が既約なので, R(X) = c または R(X) = c f1(X) をみたす c ∈ Q× が存在する. しかし,R(ζ) = 0 より R(X) = c f1(X) とならざるを得ない.よって, G(X) = f1(X) H(X) をみたす H(X) ∈ Q[X] が存在する.ここでも, H(X) = cH H*(X) と分解しておくと (cH ∈ Q× かつ H*(X) ∈ Z[X] は原始的), 補題 2.26 と補題 2.27 より G(X) = f1*(X) H*(X) が成立している.さて, ここで得られた式(の係数)を mod p で考えたものに を付記することにより, Fp[X] = Z/pZ[X] ∋ (g*(X))p = g*(Xp) = G(X) = f1*(X) H*(X) が導かれる. (ここで, Fp[X] において (u + v)p = up + vp が, Fp において wp = w が,それぞれ 成り立つことを用いた.定理 2.15, 2.16 を参照.) 従って, Fp[X] における因数分解の一意性(2章の章末追加問題8)より, deg q(X) ≥ 1, q(X)|f1*(X), q(X)|g*(X) をみたす多項式 q(X) ∈ Fp[X] = Z/pZ[X] が存在する. しかるに,Fp[X] = Z/pZ[X] = I(1) = I((Xn-1),(nXn-1)) = I(Pn(X), DPn(X)) ⊂ I(f1*(X),g*(X)) ⊂ I(q(X)) となるので矛盾である. (ただし, D は2章の章末追加問題8で導入された Fp[X] の微分作用素である.) 以上より,Fn(X) の既約性が示された. [定理 3.47:必要条件] 上での議論と同様にして I(Fn(X)) = { f(X) ∈ Q[X] | f(ξ) = 0 } が示されるので,同型 Q[X]/I(Fn(X)) → Q(ξ) = Q[ξ] が X + I(Fn(X)) → ξ なる対応により得られる(2章の章末問題2(1)を参照).ゆえに, [Q(ξ):Q] = dimQ Q(ξ) = dimQ Q[X]/I(Fn(X)) = deg Fn(X) = \varphi(n) が成り立つ. 正 n 角形が定木とコンパスで作図可能であるならば, n = 2e p1m1…prmr と素因数分解したとき, \varphi(n) = 2e-1p1m1-1(p1-1)…prmr-1(pr-1) = [Q(ξ):Q] が2のベキでなければならず(3.5.2 節を参照), m1 = ... = mr = 1 かつ p1 - 1 = 2l1, ... , pr - 1 = 2lr が示される. [定理 3.47:十分条件] p = 2m+1 をフェルマ素数とし, ξ = ξp とおく.まず, Fp(X) = Xp-1 + Xp-2 + … + X + 1 = (Xp - 1)/(X - 1) であることに注意する. ここで,各 1 ≤ i ≤ p - 1 に対して, Q(ξ) の場合と同じ理由で Q[X]/I(Fp(X)) → Q(ξi) が同型なので,Q(ξ) の自己同型 σi : Q(ξ) → Q[X]/I(Fp(X)) → Q(ξi) = Q(ξ) を σi(ξ) = ξi により定めることができる. このとき,σiσj = σij (mod p) であるので, { σ1, ... ,σp-1 } は Fp× = (Z/pZ)× = { 1, ... ,p-1 } と同型な群となる.ここで,3章の章末問題7より,Fp× は巡回群であるから,その生成元 s を選ぶ.σ = σs と置けば, σの位数は 2m であり,ここでさらに K = Q, L = Q(ξ), Kk = { x ∈ L | σ2k(x) = x } (1 ≤ k ≤ m) とおく.明らかに Km = L であり, またσは Q(ξ) の基底 ξ,ξ2, ... ,ξp-1 を 適当な順序で全てを巡回的に置換していることに注意すれば, Fp(X) の形から K0 = K となることも容易に言える. もしも,Kk+1 ≠ Kk とすれば, σ2k(uk+1) ≠ uk+1 なる uk+1 ∈ Kk+1 が存在し, vk+1 = uk+1 - σ2k(uk+1) ≠ 0 とおけば, σ2k(vk+1) = - vk+1 が成り立つ.このとき, Kk+1 ∋ v = (v + σ2k(v))/2 + (v - σ2k(v))/2 なので, Kk+1 = Kk ⊕ Kk vk+1 と (σ2k に対する固有値 ±1 の固有空間の直和に) 書き表すことができ,[Kk+1:Kk] = 2 を得る. (さらに,[L:K] = 2m であることと, 中間体の列 K = K0 ⊂ K1 ⊂ ... ⊂ Km = L が [Kk+1:Kk] ≤ 2 を満たしていることに注意すれば, 定理 3.26 により, 全ての段階で [Kk+1:Kk] = 2 となっていることも示される.) これにより,適当な ak ∈ Kk によって, Kk+1 = Kk(\sqrt{ak}) と表すことができる(例題 3.21 を参照). 従って,K = Q から出発して,次々と作図を続けて, 最終的に ξ = ξp を作図することができる. すなわち,正 p 角形を作図することができる. ここで, 正 n1 角形と正 n2 角形が作図可能であり GCD(n1,n2) = 1 ならば 正 n1n2 角形も作図可能であることに注意しておく。 (なぜなら、an1+bn2 = 1 と書いておけば, a/n2+b/n1 = 1/(n1n2) となり, 2π/(n1n2) が作図できる).また, 角の2等分の作図は何回でも続けて実行可能である. 従って, n = 2ep1…pr (p1, ... , pr は相異なるフェルマ素数) と表されているときには, 定木とコンパスにより正 n 角形を作図することが可能である. [補足] フェルマ素数は 3, 5, 17, 257, 65537 の5個しか知られていない. これら以外では, 十分に大きな値まで調べても 2m + 1 の形で素数になるものは見つかっていない. 無限個あるのか,もしくは有限個しかないのかさえも解明できていない. (本文中でも注意してあるように,m が奇数の約数 m' > 0 をもてば, 例えば (X + 1)|(Xm' + 1) という事実をみても, 2m + 1 が分解してしまうことが分かる.従って, 2m + 1 が素数であるためには, m は少なくとも 2 ベキでなければならない.実際, 3 = 220 + 1; 5 = 221 + 1; 17 = 222 + 1; 257 = 223 + 1; 65537 = 224 + 1 であり,これらは素数となる. フェルマは m が 2 ベキならば 2m + 1 は常に素数になるであろうと予想したが, オイラーが 4294967297 = 225 + 1 = 641 × 6700417 となることを示した. これ以降も(最近ではコンピュータを用いて)計算は試みられているが, どんなに十分に大きな r > 5 に対しても 22r + 1 は分解してしまい, 新しいフェルマ素数は見つからずに現在に至っている. フェルマ素数の名前はこの予想に由来している.)
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