15週で学ぶ複素関数論

まえがき

 本書は,理学,工学系で物理学,とくに電磁気学を学ぶ際の数学的基礎となる複素関数論の理論と実際を,最短の労力で理解できるよう解説した教科書である.また,数学専攻の学生のための複素解析の一応の入門書としても利用できるだけの論理的整合性を保つよう努めた.  全体の構成上で留意したのは以下の諸点である.  1) 道具としての複素関数論は通常1セメスター13,4回の講義で行われる.その範囲の回数で収まるよう,各章は1 回ずつの講義に見合う読み切りの形で記述した.  2) 無用な一般論を避け,必要かつほぼ十分と思われる内容を,数学的に一貫した論理的記述でコンパクトにまとめた.  3) 各章の演習問題によって理論の骨子が見通せるように配慮した.これらは,理論の本質を現象を通して理解する機会となることを意図した.解答はできるだけ詳しく解説した.  4) 微積分学の基礎知識は仮定したが,用いている個所ではその内容を指摘した.また,偏微分方程式論,フーリエ解析の理論との接続も意識し,フーリエ展開の定理は証明なしに用い,その展開の妥当性を演習問題とした.  なお,第 13 章のグリーン関数によるディリクレ問題へのアプローチは,省略したりレポートとするのが望ましいと思われる.また,第 9 章で留数計算による定積分の計算を行っているが,1 回の講義では収まらないと思われる.第 10 章は偏角の原理の話だけなので,この2つの話題はコミにして 2 回というつもりである.

著 者