明解 微積分 限定版


まえがき

本書は,当初,筑波大学の数学類,物理学類,化学類,地球学類等の初年級 の学生を対象とした解析学の教科書・学習書として書かれたものである.し かしながら,本書の主眼は,幅広く理学,工学,医学等を学ぶ学生を対象にし て,高校における数学と大学における微積分との橋渡しをすることである.高 校時代に身につけた微積分の知識を出発点にして,大学での微積分の基本的な 概念を理解することおよび将来の応用を支える確かな思考力を養うことは,微 積分を学ぶ上で,最も重要であると著者たちは考えている. 本書は,筑波大学大学院数理物質科学研究科数学専攻の同僚諸氏に,実際の 講義および演習において使用して頂き,その貴重なご意見,注釈を取り入れ て,現在も改訂を続けている.そのために,本書は,明解微積分の「限定版」 というタイトルが付記されている. 本書の各章毎の分担は,以下のとおりである: 第1章(連続関数),第2章(微分法),第7章(実数の連続性再論), 第8章(連続関数の基本性質),第9章(リーマン積分)南就将 第3章(積分法)笠原勇二 第4章(多変数関数の微分法),第6章(無限級数)若林誠一郎 第5章(重積分)平良和昭 学ぶことが楽しくなるには,学生個人の努力が不可欠である.特に,微積分 を理解するには計算力をつけておくことが大切である.そこで,各章毎に,理 解を確認するための「問」,章末には,学習内容の深化を目的とする「章末問 題」を課した.これらの解答およびヒントが巻末に収録されているので,積極 的に利用してほしい. 最後に,筑波大学大学院数理物質科学研究科数学専攻の同僚諸氏による様々 な指摘及び工夫が,本書の随所において生かされていることを記して,感謝の 言葉に代えさせて頂きます.また,本書の刊行について,辛抱強く,見守って 下さった数学書房の横山伸氏に心からお礼を申し上げます. 2008 年3 月 著者一同


目次

●第I 部 微分積分学 第1章 連続関数 3 1.1 実数.................................. 3 1.2 集合.................................. 6 1.3 実数の連続性の公理.......................... 8 1.4 関数の極限値............................. 17 1.5 連続関数................................ 24 1.6 初等関数................................ 28 第2章 微分法 35 2.1 微分係数と導関数........................... 35 2.2 初等関数の微分............................ 47 2.3 平均値の定理............................. 55 2.4 テーラーの定理............................ 71 第3章 積分法 90 3.1 定積分と不定積分........................... 90 3.2 基本的な不定積分........................... 99 3.3 置換積分と部分積分.......................... 101 3.4 積分の計算(1)有理関数...................... 109 3.5 積分の計算(2)三角関数...................... 112 3.6 積分の計算(3)無理関数...................... 115 3.7 リーマン積分可能性.......................... 117 3.8 広義積分................................ 122 3.9 応用:曲線の長さ........................... 130 第4章 多変数関数の微分法 136 4.1 R_n の点集合と多変数関数...................... 136 4.2 偏微分と全微分............................ 144 4.3 テーラーの定理............................ 156 4.4 陰関数定理.............................. 163 第5章 重積分 176 5.1 重積分の定義(その1) ....................... 176 5.2 重積分の基本的な性質(その1) ................... 179 5.3 重積分と累次積分(その1) ..................... 180 5.4 重積分の定義(その2) ....................... 182 5.4.1 面積ゼロの集合........................... 184 5.4.2 重積分の存在............................. 186 5.4.3 重積分の基本的な性質(その2) .................. 192 5.5 重積分と体積............................. 193 5.6 重積分の変数変換の公式....................... 195 5.6.1 ヤコビアン(ヤコビ行列式)の計算例................ 196 5.7 変数変換の公式の例.......................... 197 5.8 広義積分の例............................. 199 5.9 曲面.................................. 203 5.9.1 曲面の接平面............................. 204 5.10 曲面積................................. 206 第6章 無限級数 213 6.1 定数項級数.............................. 213 6.2 一様収束と関数項級数......................... 224 6.3 ベキ級数................................ 228 6.4 テーラー級数............................. 235 ●第II部 解析学入門 第7章 実数の連続性再論 245 7.1 数列と関数の極限値.......................... 245 7.2 連続性公理.............................. 254 7.3 補記.................................. 259 7.3.1 上極限と下極限........................... 259 7.3.2 縮小区間列の原理.......................... 261 7.3.3 デーデキント切断.......................... 262 7.3.4 ハイネ・ボレルの被覆定理...................... 263 第8章 連続関数の基本性質 265 第9章 リーマン積分 270 9.1 区間の分割とリーマン積分...................... 270 9.2 定積分の性質............................. 276 9.3 微積分学の基本定理.......................... 284 9.4 ダルブーの定理.リーマン和の極限としての定積分......... 286 問題解答291