明解 確率論入門
笠原勇二 著
A5判・並製・224頁・2100円+税
入門書では省略されていることが多い数学的背景部分を丁寧に説明することにより数学としての確率論の考え方を明快に解説。
「教養としての確率論」「統計学を学ぶための予備知識」として格好の書である。
目次
第 1 章 基礎的なことがら
1.1 確率空間................................ 1
1.2 確率変数................................ 16
1.3 分布.................................. 19
1.4 いろいろな分布............................ 33
第 2 章 期待値と分散
2.1 期待値................................. 44
2.2 分散と標準偏差............................ 62
2.3 いろいろな分布の平均と分散..................... 67
2.4 ブラック・ショールズの公式. .................... 72
第 3 章 独立性
3.1 確率変数の独立性........................... 80
3.2 事象の独立性............................. 89
3.3 条件付き確率. ............................. 93
3.4 独立確率変数の和の分布....................... 97
第 4 章 チェビシェフの不等式と大数の法則
4.1 シュワルツの不等式とチェビシェフの不等式............. 107
4.2 大数の法則.............................. 111
第 5 章 特性関数と分布の収束
5.1 特性関数................................ 118
5.2 独立性と特性関数........................... 127
5.3 確率母関数,積率母関数,ラプラス変換. ............... 129
5.4 分布の収束とグリベンコの定理.................... 134
5.5 補足とグリベンコ・レヴィの定理の証明. ............... 144
第 6 章 二項分布の正規近似と中心極限定理
6.1 正規分布................................ 153
6.2 二項分布の正規近似.......................... 154
6.3 中心極限定理............................. 157
第 7 章 ポアソンの小数法則
7.1 二項分布のポアソン近似....................... 164
7.2 小数法則................................ 167
第 8 章 多次元分布
8.1 確率ベクトル............................. 170
8.2 特性関数とクラメールの方法..................... 173
8.3 独立性................................. 175
8.4 変数変換................................ 181
8.5 多次元正規分布............................ 188
8.6 条件付き期待値:その1 ....................... 194
8.7 条件付き期待値:その2 ....................... 204
問題への解答
索引
まえがき
本書は,著者がお茶の水女子大学理学部と筑波大学理工学群にて行った確率論の入門コースの講義録である.
確率論にはすでに数多くの入門書があり,数学的な厳密さを重視したものから応用に力点をおいたものまで多様なものがそろっており,名著とよぶべき本も少なくない.そのような中で,さらに1冊を加えることに躊躇がないわけではない.実際,数学的に厳密に勉強したい学生には確率論の専門家が書いた測度論に基づく標準的な教科書があるし,証明はさておき使い方を知りたいという学生には応用系の教科書があるからである.しかし,前者のタイプの教科書は,確率論の専門家を目指す学生を別とすれば,測度論がネックとなり少し敷居が高いと感じることも多いようであるし,また後者のタイプの教科書は確率論の諸概念が曖昧のため,真剣に論理を追おうとすると困難を感じる読者も少なくない.
そこで本書は,それらの本格的な教科書を読む前の準備として読む平易な入門書として,読み物風に気楽に読め,かつ,測度論は陽に用いないものの,概念や論理の大筋は測度論を下敷きとし,書名どおりの「明解」を目標とした.なお,数理統計学へ進むための入門としても役立つことを心がけた.
主として大学 2 年次または 3 年次の学生を対象とし,原則として微分積分と線形代数のみを予備知識とした.2 単位の授業であれば第6 章までが標準的な内容である.ただし標題に. 印の付いたいくつかの節は取捨選択して頂きたい.
本書を読んで確率論や数理統計学に興味を持っていただき,さらに本格的な教科書へ進む一助になれば幸いである.
2009年8月
著者