本書は理工系の学生に対する標準的な微積分学の入門書です. とくに講義を 意識し, 春秋の2 学期24 回の講義形式で構成されています. しかし各章によっ て内容に濃淡があります.1 章を2 回で講義したり演習・中間試験・試験など で26〜30 回に調整されるとよいかと思います. “ 標準的な”と曖昧な言葉を 使いましたが, 昨今の傾向から言えばむしろ“ 反抗的な”と言った方が適切か もしれません. 社会的な問題となっている理科離れや学力低下の影響で理工系 の数学のカリキュラムも大きく様変わりしています. そんな中であえて“標準 的な”教科書を執筆した理由には“ 標準”を再確認して欲しいとの意味が込め られています. 以下に本書の特徴をまとめます. . 証明を付ける. 実数の連続公理から始めて, いわゆるε . δ 論法も避けず に使い, すべての定理に証明を付けました. 論証することの技術を習得し てください. ただし第14 章で使う多項式環の性質, 第20 章の面積確定 の定義, 第22 章で使う線形代数に関する知識は参考文献に委ねました. . 1 変数の微積分. 本書では多変数関数は扱いません. 偏微分と重積分は 続編でまとめます.1 変数の微積分から微分方程式とその解法を習得し, そして数理モデルで完結させています. 何で微積分を勉強するの?とい う自然な質問にきちんと答えるためです. 第24 章の内容は1 冊の本で も足りないくらいの内容です. ゼミなどで発展させてください. . 演習問題の解説. 各章の最後に演習問題を10 題ほど作りました. 解答は 巻末にあります. 解答は単なる数値の答えのみとせず, できる限り解説 を付けました. 演習問題も例題と思って必ずチャレンジしてください.
第1章 数列の収束 1.1 数列の収束 1.2 数列の基本演算 1.3 極限値の計算I 1.4 極限値の計算II 1.5 演習問題 第2章 実数の連続公理 2.1 上限と下限 2.2 有界な単調列 2.3 Archimedes の原理 2.4 有界列 2.5 Cauchy 列 2.6 実数とは 2.7 演習問題 第3章 関数の極限 3.1 関数の極限値 3.2 極限の基本演算 3.3 極限値の計算I 3.4 極限値の計算II 3.5 演習問題 第4章 連続関数 4.1 連続と不連続 4.2 連続関数の基本演算 4.3 一様連続 4.4 中間値の定理 4.5 有界性と最大・最小の定理 4.6 演習問題 第5章 初等関数 5.1 関数と逆関数 5.2 代数関数 5.3 三角関数と逆三角関数 5.4 指数関数と対数関数 5.5 べき関数 5.6 双曲線関数 5.7 演習問題 第6章 微分 6.1 微分係数と導関数 6.2 接線と法線 6.3 Landau 記号 6.4 無限小 6.5 線形近似 6.6 演習問題 第7章 微分法の基本 7.1 基本公式 7.2 合成関数の微分 7.3 逆関数の微分 7.4 媒介変数での微分 7.5 初等関数の微分公式 7.6 演習問題 第8章 平均値の定理 8.1 極大と極小 8.2 平均値の定理 8.3 不定形の極限 8.4 演習問題 第9章 高階微分とTaylor の定理 9.1 高階微分 9.2 Leibniz の公式 9.3 Taylor の定理 9.4 演習問題 第10章 Maclaurin 級数 10.1 Maclaurin の定理 10.2 Maclaurin 級数 10.3 収束の速さ 10.4 演習問題 第11章 関数の変動 11.1 関数の増減 11.2 極大・極小の判定 11.3 関数の凹凸 11.4 停留点と変曲点 11.5 演習問題 第12章 関数の概形 12.1 増減表 12.2 定義域 12.3 漸近線 12.4 演習問題 第13章 不定積分 13.1 基本公式 13.2 置換積分 13.3 部分積分 13.4 漸化式 13.5 演習問題 第14章 有理関数の積分 14.1 多項式環 14.2 部分分数展開 14.3 基本形の不定積分 14.4いろいろな例 14.5 演習問題 第15章 無理関数・三角関数の積分 15.1 無理関数 15.2 三角関数 15.3 指数関数 15.4 初等関数の積分 15.5 演習問題 第16章 定積分 16.1 Riemann 和と定積分 16.2 連続関数の定積分 16.3 定積分の基本性質 16.4 積分の平均値の定理 16.5 演習問題 第17章 微積分の基本定理 17.1 基本定理 17.2 極限の計算 17.3 定積分の微分 17.4 定積分と不等式 17.5 演習問題 第18章 定積分の計算 18.1 基本公式I 18.2 基本公式II 18.3 よく現れる定積分 18.4 演習問題 第19章 広義積分 19.1 端点で定義されない場合 19.2 無限区間の場合 19.3 不連続関数の場合 19.4 主値積分 19.5 Γ関数とB 関数 19.6 演習問題 第20章 定積分の応用 20.1 Riemann 和を用いる面積 20.2 体積 20.3 曲線の長さ 20.4 演習問題 第21章 1 階の微分方程式 21.1 変数分離形 21.2 同次形 21.3 1 階線形 21.4 Bernoulli 形 21.5 演習問題 第22章 線形微分方程式 22.1 解空間 22.2 Wronskian 22.3 解空間の基底 22.4 演習問題 第23章 2 階定数係数線形微分方程式 23.1 同次型 23.2 非同次型 23.3 演習問題 第24章 微分方程式と現象 24.1 指数増大・指数減少 24.2 成長曲線 24.3 ばねの運動と共振 24.4 戦争モデル 24.5 生態系のモデル 24.6 演習問題