ひとりで学べる線型代数1

──ベクトル空間と行列式


まえがき

先生が書いたテキストを読んで問題を解く.先生は学生からの質問 に答えるだけで,自らは何も教えない.最初は「何だよ! この授業は…」と 思っていました.いや,今も思っているかもしれません.しかし,この講義のない 授業からは,自ら学ぶ姿勢の大切さについて学べたと思います. この授業の形式を聞いたとき,変わった授業だなと思いました.今まで, こういう授業を受けていなかったからそのときはそう思ったけど,終ってみて 思ったのは,ノートを取っている他の授業よりも,明らかに,この授業の方が 理解できたということです. 自分でテキストを読んで理解した上で問題を解く, 前には質問に答えてくれる先生が居る,とても理想的な形式だと思います. 大学の授業は,頑張ってノートを取り,テスト前に復習するみたいな感じで, 頭を使って授業していないけど,こういう形式だと,そうでないからよいと 思いました. ・この授業の形式は,継続的な学習習慣がつくことから好ましいと思います. ・本気で取り組むにはよい方法だと思う. ・先生の問題は難しいですが,テキストをよく読み込めば本当はとても 分かりやすいということに気がつきました. これらは私がこのテキストを用いて行った「線型代数」の受講生からの ポジティブな評価です.受講生に配布したテキストを各年度ごとに書き換え, このテキストの形になりました.各章は講義 1 回分に対応しています. 「線型代数」は,数学を学ぶための基礎科目の1つです. 初学者がひとりで学べるように,できるだけ平易な説明をするように心がけて, このテキストを書きました. 配布したテキストに対する受講生からの「ネガティブ」な評価は 「例題を増やしてほしい」 「問題の解答がほしい」でした.そこで,指摘を受けた箇所で の例題を増やし,また,問題には,すべて,詳細な解答を付け, 解答は,初学者の参考となるように,略解(メモ)ではなく,説明を補い, 文章の形で書きました. 「線型代数」で扱われる標準的な内容を 2 分冊に配分してあります. 第 1 分冊では,ベクトル空間と行列式を,第 2 分冊では, 線型写像と計量空間を取り上げました.これらの 2 分冊を修得するならば 「線型代数」に関する十分に高度な知識を修得できると思います. このテキストの問題(および解答)の多くは,個別に明記することなく, 参考にした他著者のテキストから借用しました. それらの問題を作られた著者の方々のご宥恕を請うとともに, 著者の方々に深く感謝申し上げます. 2007 年 12 月 20 日 近藤庄一


目次

1巻 ベクトル空間と行列式 1 章 用語と記号 2 章 スカラーの集合 3 章 ベクトル空間の演算 4 章 部分空間 5 章 1次結合 6 章 連立1次方程式の解法 7 章 生成元の取り替え 8 章 1次独立な元 9 章 基底と次元 10 章 有限生成な空間 11 章 基底の変換 12 章 行列の積 13 章 正則行列 14 章 行列式の性質 15 章 行列式の計算 16 章 行列式の展開公式 17 章 Cramer の公式と逆行列 18 章 行列式を表す式 19 章 置換と逆置換 20 章 互換と巡回置換 21 章 行列式の定義 22 章 行列式に関する等式 23 章 行列のランク 24 章 行列の小行列式 25 章 基本変形を表す行列